
完全刷新!2025年型ドゥカティ・パニガーレV2 S徹底レビュー|公道もサーキットも圧倒する次世代スーパースポーツ
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ドゥカティの名を冠するスーパースポーツモデル「パニガーレV2」が2025年、完全新設計となる「パニガーレV2 S」として生まれ変わった。これまでの955ccエンジンを廃し、新たに搭載されたのは可変バルブタイミング(VVT)を採用した890ccの水冷90度Vツイン。ピークパワーを抑えつつも、扱いやすさとコーナリング性能を重視した仕様で、公道とサーキットの両立を狙った意欲作だ。
全く新しい設計思想で生まれ変わったV2 S
2025年モデルは、単なるマイナーチェンジではない。955ccのSuperquadroエンジンを採用していた前モデルとは異なり、新型では軽量かつフレンドリーな890ccエンジンを搭載。この変更により、従来のパニガーレとは一線を画す乗り味が実現している。
この新しいエンジンは、最大出力120hp(10,750rpm)と最大トルク69lb-ft(8,250rpm)を発生。数値だけ見ると控えめに見えるかもしれないが、ライダーにとってはコントロール性と扱いやすさこそが最重要。実際、従来比で約13kg(29lbs)もの軽量化が図られ、旋回性能とバランス感覚は大きく向上している。
エンジン:軽量化と耐久性、そしてレスポンスの融合
新しいパワーユニットでは、ドゥカティ伝統のデスモドロミックバルブシステムを廃止。代わりに、シンプルなフィンガーフォロワー式バルブトレインを採用しており、これが大幅な軽量化とバルブメンテナンス間隔の延長(約29,000kmごと、+4,800km)を実現している。
吸気側には中空ステムバルブを使用し、さらなる軽量化を図ると同時に、可変吸気バルブタイミング(Intake Variable Timing, IVT)を導入。これにより低中速域のトルクが大幅に向上し、公道での実用性が飛躍的に高まった。
ライディングフィール:トルク重視のマイルドな加速感
走行中のフィールは、まさに「優しいパニガーレ」。回転上昇はスムーズかつ力強く、ライドバイワイヤスロットルとの協調も良好。11,350rpmのレッドゾーンまでストレスなく吹け上がるが、600ccクラスの4気筒のようなピーキーさはなく、非常にフレンドリーな特性となっている。
サーキットでのテストでは、ピレリ製WSBKグレードのスリックタイヤを装着。2.6マイル(約4.2km)の「Circuito de Seville」の16のコーナーでも、軽快なハンドリングと安定感を発揮した。
車体構成:熟成されたシャシーとエレクトロニクス
パニガーレV2 Sの最大の美点の一つはそのシャシー性能。徹底的に重量バランスを追求し、リアセクションには高マウントエキゾーストを採用。見た目のインパクトもさることながら、マスの集中化にも寄与している。
また、電子制御面では以下の機能が搭載されている:
- ライドモード(Race / Sport / Road / Wet)
- パワーモード設定
- トラクションコントロール(8段階)
- ウィリーコントロール(4段階)
- エンジンブレーキコントロール(3段階)
- コーナリングABS
- 双方向クイックシフター
Trackモードでは全てのセッティングがハイパフォーマンス向けに最適化され、サーキット走行における限界性能を引き出す仕様になっている。
快適性と実用性:新たなパニガーレ像の確立
ラジエターやエンジン周辺の熱対策も改善されており、都市部での渋滞や低速走行時の熱ダレにも強くなった。これまでのパニガーレシリーズは「レーサー寄り」であったが、本モデルでは明確に「ライダー寄り」な仕様が意識されている。
唯一の懸念点としては、クイックシフターが稀にギア選択時に保護モードを発動すること。しかしこれは安全性を優先した制御によるもので、操作に慣れれば問題にはならないレベルだ。
価格と仕様
2025年型ドゥカティ・パニガーレV2 Sの価格は約1,000,000円(18,995USドル)。モノポスト(ソロシート)仕様での販売となり、パッセンジャーペグやタンデムシートは非搭載。これは過去の748(1994年モデル)などに通じる、純粋な走りを追求した設計思想の表れと言えるだろう。
まとめ:次世代スーパースポーツの理想形
2025年型パニガーレV2 Sは、従来のスーパースポーツとは異なるアプローチでライダーの期待に応える。尖った性能ではなく、あくまで「扱いやすさ」と「楽しさ」を追求した設計は、今後のスーパースポーツカテゴリー全体に大きな影響を与えるはずだ。
ピークパワー至上主義から脱却し、総合的なバランスと快適性を兼ね備えたV2 Sは、サーキットと公道の両方でライディングの楽しさを再発見させてくれるマシンである。