
ブレーキ性能が進化する!Astemoの最新特許が示す「空冷フォーク」の革新性とは?
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二輪業界におけるテクノロジーの進化は日進月歩ですが、2024年のEICMA(ミラノ国際モーターサイクルショー)で話題となったのが、Astemo(旧・日立Astemo)による新たなサスペンションとブレーキの一体型設計です。本記事では、その革新的な「Harmonized Function Design(調和機能設計)」と、それに基づいた新たな特許技術について詳しく解説します。
Astemoとは?
2024年4月1日から社名を「Astemo」と改称したこの企業は、自動車およびバイク向けの大手部品サプライヤーで、Hondaを主要株主に持ち、サスペンションブランドの「Showa」およびブレーキブランドの「Nissin」を傘下に擁しています。この強力な体制により、サスペンションとブレーキを統合的に設計できる点が大きな強みです。
EICMAで発表された「Harmonized Function Design」
Astemoは昨年のEICMAで、フォークボトムとフロントブレーキキャリパーを一つのアルミ削り出しブロックから構成するというコンセプトを発表しました。ShowaとNissinのロゴが並ぶこの部品は、従来の構造より約0.44ポンド(約200g)軽量化され、放熱性も5%向上しているとされています。これは、フォークボトム自体がキャリパーのヒートシンクとして機能するからです。
新たな特許に見る空冷構造の進化
EICMAでの発表に加え、Astemoは新たに空気の流れを重視した特許を出願しています。その中心にあるのが、フォーク下部に設けられたエアインテークダクトです。これはアクスルホルダーとフォークスタンションの間に設けられ、走行風を直接キャリパーへと導く構造です。
このアプローチは、従来のボルトオン型ラジアルマウントキャリパーにも適用可能で、メンテナンス性を犠牲にせずに空冷性能を高められる点が注目されます。
レーシングマシンにも通じるエアフローの最適化
近年のスーパースポーツやレーシングマシンでは、ブレーキの冷却効率を高めるためのエアダクトがますます複雑化しています。たとえばCFMotoの「675SR-R」などは、純正でブレーキ冷却用のダクトを備えています。このようなトレンドに呼応するように、Astemoの新特許では正面から見て開口部が見える構造を採用し、空力性能と冷却性能の両立を目指しています。
複数のバリエーションによる柔軟な設計
特許には複数のバリエーションが盛り込まれています。たとえば、フォーク下部とアクスルホルダーを繋ぐプレートを2枚配置して中央に開口部を作る構造や、側面からも吸気できる追加ダクトの配置、さらにはフィン付きプレートによる空気流の制御といったアイデアも盛り込まれています。
一部の構造では、フォーク下部を中央またはオフセットで1枚のプレートで支える形式もあり、ブレーキキャリパーブラケットが構造的な剛性を補完する形となっています。さらに、片側を密閉した構造にしつつも、空気の通り道を確保するデザインも含まれています。
今後の展望と市販車への応用可能性
このような設計は、現在はまだ特許段階にあるものの、将来的にスーパースポーツやハイエンドモデルへの搭載が期待されます。サスペンションとブレーキの統合設計は、剛性・軽量化・冷却性能といった複数の性能向上を実現する可能性があり、今後の二輪車開発における新たなスタンダードとなるかもしれません。
まとめ
Astemoの「Harmonized Function Design」とその最新特許は、フォークとブレーキを一体的に捉える革新的な発想から生まれたものです。軽量化と放熱性の向上に加え、メンテナンス性を損なわずに空冷効果を高めるというバランスの取れた設計は、今後の市販車やレース車両において重要な技術的要素となることでしょう。バイクの性能を一段と高めるこの新技術の動向から、今後も目が離せません。