MT-09 SPがR9に迫る!ヤマハ最新モデルの真価を徹底レビュー

MT-09 SPがR9に迫る!ヤマハ最新モデルの真価を徹底レビュー

走りの喜びを追求した一台――それが2024年型「Yamaha MT-09 SP」だ。

アメリカ・ノースカロライナ州に位置する「Tail of the Dragon(ドラゴンの尾)」は、318ものコーナーが詰め込まれた約18kmの峠道。その過酷なルートでテストされたMT-09 SPは、まるでレーサーバイクのような一体感と安心感をライダーに提供した。

ブレンボStylemaキャリパーが生み出す圧倒的制動力

まず注目したいのが、標準モデルからの最も大きなアップグレードポイントであるブレーキシステムだ。MT-09 SPには、業界最高峰とされるBrembo製Stylemaキャリパーが採用されている。

このキャリパーは、標準モデルに搭載されているAdvics製キャリパーよりも約13%軽量(マウントボルト込み)で、冷却性能にも優れている。4つのピストンすべてが30.0mmと均一で、安定した制動力を発揮する構造だ。

ディスク径は298mm、マスターシリンダーは16mmのブレンボ製ラジアルタイプ、ブレーキラインもスチールメッシュと、隙のない構成となっている。峠道での連続したハードブレーキングでも、ブレンボの信頼性は揺るがなかった。

サスペンションは見た目だけでなく性能も本格派

見た目にも目を引くゴールドのサスペンションは、リアにÖhlins製ショックを採用。リモートプリロード調整とコンプレッション調整が可能で、より細やかなセッティングが実現されている。

フロントフォークはスウェーデン製のように見えるが、実際にはKYB製。しかし、DLCコーティングされたインナーチューブや、プリロード、リバウンド、さらには高速・低速のコンプレッション調整が可能な本格仕様だ。

その効果は走行中に如実に現れ、フロントの接地感は一日を通して変わらず安定していた。路面の細かな凹凸も見事に吸収し、アグレッシブなライディングにも応えてくれる。

専用トラックモードとスマートキーの搭載で操作性アップ

MT-09 SPには専用の「Trackモード」が用意されており、標準モデルではできなかったエンジンブレーキの調整や、リアABSのキャンセルも可能になっている。

さらに、4つのカスタマイズ可能なトラックモードを搭載しており、サーキット走行や峠道に応じた細やかな制御が可能。TFTディスプレイも専用設計となっており、ラップタイマーや必要最小限の情報表示が優先される。

また、スマートキーシステムも搭載され、鍵をポケットに入れたままイグニッションのON/OFFやタンクキャップの開閉、ハンドルロックの操作まで可能。利便性とセキュリティ性が同時に向上している。

パワーユニットはそのまま、しかし魅力は衰えず

エンジンは標準モデルと同様の890cc・3気筒エンジンを搭載しており、その音とレスポンスは相変わらず秀逸だ。特にストリートおよびスポーツモードでは滑らかで鋭い加速を実現。低回転域で若干の「フラットスポット(力が抜ける回転数帯)」が感じられるが、高回転では怒涛のパワーを発揮する。

双方向クイックシフターも標準装備されており、加速時のシフトチェンジは極めてスムーズで、ギアチェンジのたびに弾けるようなサウンドがライダーを魅了する。

快適性も妥協なし、通勤からツーリングまで対応

ライディングポジションはニュートラルで、長時間のライドでも疲れにくい設計。通勤や街乗りにも対応できる快適さを持ちながら、ワインディングでは本格スポーツバイクとしての一面を見せる。

オプションとして、ヤマハ純正アクセサリーでトップケースやコンフォートシート、各種プロテクターなども用意されており、自分好みにカスタマイズする楽しみも残されている。

価格とコストパフォーマンス

2024年モデルのMT-09 SPの米国価格は12,299USドル、日本円で約1,800,000円(為替レートにより変動あり)だ。標準モデルとの価格差は約1,700USドル(約250,000円)とされているが、同じレベルのブレーキやサスペンションを後付けで装備しようとすれば、この差額以上のコストがかかる。

そう考えると、最初からSPを選ぶという判断は非常にコストパフォーマンスが高いと言える。

総評:R9の影が見え隠れする完成度

MT-09 SPは、スタンダードモデルの完成度をさらに高め、サーキット走行や峠道での楽しさを追求した一台だ。特にブレーキとサスペンションの向上は、ライダーに大きな安心感と楽しさを提供してくれる。

ヤマハが開発中と噂される「R9」への布石とも取れるこのモデル。もしR9が発売されたとしても、MT-09 SPはストリートとスポーツのバランスを極めた一台として、決して色褪せることはないだろう。

中量級ネイキッドバイクを検討しているライダーにとって、MT-09 SPは間違いなく注目すべき存在だ。

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